共有名義の不動産を相続することになった場合は、どのようなトラブルが考えられるでしょうか。
私の母は再婚して分譲マンションに住んでいますが、名義は義理の父との共有名義となっているため、相続したらそのマンションは私と私の弟、Aさんとの共有となります。
もし母が亡くなった場合のマンションの相続はどうなるのかを想定の上で考えてみました。
共有名義の不動産の相続
母と再婚した義父はハワイに土地と家を買って日本と行き来するために、成田空港に近いところにマンションを買いました。
周囲は農家が多く地価も安いところです。
駅からは車で20分位の田舎で、売りに出してすぐ売れるようなところではありません。
なので、母と義父の死後、売れないマンションを私が相続しなければならないような事態を避ける方法はないものか、と皆で考えてみました。
共有名義の不動産の相続状況
現在はマンションの名義は義理の父であるAさんと母の半分ずつの共有名義になっています。
母が亡くなった場合は、Aさんと私、弟の共有名義となります。
そのマンションを売却したい時には、Aさんと弟の同意が必要となります。
しかも、Aさんはそのマンションに現在も住んでおり、この先も住み続けたい意向です。
共有名義から単独名義に変更できる
では、今すぐに全部を義理の父にしてもらってはどうでしょうか。
これは共有持分の買取請求という方法で、誰かひとりに持分を買い取ってもらって共有名義を解消しようというものです。
万が一Aさんが先に亡くなった場合は、妻である母がAさんの預貯金とマンションの持分2分の1を合わせて相続することになり、その場合は全部が母の名義となります。
この時は、配偶者が単独名義で相続をすることができますので、共有状態はもちろん解消されます。
共有名義の相続には遺言書が必須
逆に母が先に亡くなった場合はどうかというと、母がそれを義理の父に相続させるという遺言を書いたとすれば、マンションは義理の父Aさんの名義とすることができます。
公正証書遺言で遺言書を残した場合、は遺言執行者の指定ができ、遺言執行者はそれをもって登記を行うことができます。
この時は、遺言執行者をAさんでもいいのですが、子どもの私にしておいてもらえれば、私が登記を移転することができます。
万が一Aさんが登記を怠ったとしても、私が登記を行うことができます。
共有名義の相続のトラブル
もし、母が遺言を書かなかった場合でも、私がマンションは義父にそのまま住んでもらいたいので、相続権があっても私の分は義父に譲りたいと思っています。
しかし、私には弟がおり、その弟は現在母とも私とも連絡が取れません。
いちばん困るのは弟が相続人になると考えた場合です。
共有名義の不動産を相続できないケース
母が亡くなったとすると、マンションの相続権は義父が2分の1、母の分の2分の1ずつを私と弟が相続するということになります。
もし、弟が連絡が取れないままだと、私がいくら義父に譲りたいと思っても弟の分の相続の手続きができません。
すると、母の分は相続登記ができずマンションを義父のものにもできないことになります。
音信不通以外にも、誰か相続人が一人でも同意が取れない場合には、相続登記そのものができません。
その場合に有効なのは、共有持分の売却となります。
相続権を持つ相手には代償金
あるいは、弟が欲が深い場合は、そのマンションの所有権をめぐって争いが起こることも考えられます。
たとえば、自分の相続分を義理の父に買うように言う可能性もでてきます。「代償金」といって、自分の相続分をお金で要求するということです。
義父はそのような措置を取ることははできますが、母と二人で買って住んでいた家に、さらにお金を払わなくては自分のものにならないという、不自由な話になってしまいます。
共有者の同意がなければ相続できない
あるいは、弟は姿を現さないままで過ぎるかもしれず、その場合、義父は亡くなった母の名義のままそこに住み続けることはできます。
しかし、それでも母の名義の分は、最終的に私が相続はできないまでも、義父が老いたり、施設に入った場合には、私が維持管理しなければならない可能性も出てきてしまいます。
これは、私の実父の場合と同じパターンです。
共有名義の母の分1/2を私単独で相続登記し、義父に移転登記するということも、弟の同意がなければできないのです。
共有名義の不動産の相続権
この場合、義理の父と私は養子縁組をしていないので、義父の財産に関しては私は相続権はありません。
実子の居ない義父が死亡した場合の、マンションを相続する相続人は、義父の身内である兄弟3人と、母の子どもである、私と弟という、ひじょうに複雑なことになってしまいます。
そして、そのうちの一人でも連絡が取れなければ、永久に相続登記はできません。
共有名義のスムーズな相続
このような場合は母と、それから義父のどちらもが、私にマンションを相続させる、または譲るという遺言を書くということが、とりあえずはいちばん良い方法です。
遺言がなければ、音信不通や行方不明のきょうだいが姿を現さない限り、相続登記はできず、母の遺産を夫である義父も私も受け取ることはできないということになるわけです。
共有名義には公正証書遺言がよい
公正証書遺言はそのような状況を回避する唯一の方法となります。
連絡の取れない相続人がいるという場合は、公正証書遺言でなければ対応できません。
自筆遺言書、つまり、母が自分で書いた遺言書の場合は、それをもって相続登記をするということはできないのです。
最終的に母に公正遺言書を書いてもらうという点で、この問題はとりあえず解決に至りました。