共有持分の放棄は「早いもの勝ち」といわれますが、放棄を表明しただけでは、所有者であることは変わりません。
「共有持分の放棄」には登記を移転する手続きが必要なため、共有者が同意をしない限りは相続や所有を免れることはできません。
この記事では誤解を招きやすい「共有持分の放棄」についてわかりやすく説明します。
この記事でわかること
- 共有持分の放棄とは
- 持分放棄が成り立つには共有者の同意が必要
- 共有者の同意なしでできる持分の売却
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共有持分の放棄は”早いもの勝ち”なのか
共有不動産の自分の持分をがいらないと放棄という手続きがあるのは本当です。
共有持分の放棄は文書で「共有持分を放棄する」と示すだけで行えます。
しかし、放棄する意思の伝達は自由に行えますが、自分の持分と所有者としての名前はそのままでは登記から消えるわけではありません。
そのままではいつまでたってもその不動産の名義人であり所有している状態が続くこととなります。
実際には登記を書き換える必要があり、それには共有者、または売却等でその共有持分を希望する第三者の同意が必要です。
共有持分の放棄とは
共有持分の放棄について調べている方は、その共有持分の権利がいらない、その不動産をもう所有していたくないと希望されている方だと思います。
共有持分の放棄については、多く「早い者勝ち」と説明されることが多く、たとえば共有持分に関するあるサイトは共有持分の放棄について次のように説明しています。
共有名義の不動産は持分放棄が認められています。持分放棄なら、売買や贈与のように相手を探す必要がないので、簡単に共有状態から抜け出せるのです。―「共有持分の教科書」https://mochibun-kyokasho.com/shared-land-waive/
これだったら、今すぐにでも要らない共有物の持分が手放せそうに思えますが、しかし実際にはそう簡単ではありません。
共有持分の放棄のしかた
このあと、上の記事ではこの持分放棄は意思を伝達する書面を示すだけでよいと説明しているところがあり、
そうか、内容証明で「共有名義不動産○○市○○町xxの実家家屋の共有持分を放棄します」と書いて送れば共有持分が放棄できるのか!
と誤解する人が少なくありません。
内容証明の書き方は下の記事に文例がありますので、参考にしてください。
共有持分の放棄は「早い者勝ち」の誤解
さらにその続きを読むと
持分放棄は「早い者勝ち」が原則です。共有者が次々に放棄をおこない、最後の1人になった場合、持分放棄ができません。そのため、持分放棄を検討しているなら、なるべく早く行動に起こすべきです。最後の1人になってしまうと、処分するには売却相手や贈与相手を探さなければいけません。
となっているので早合点してしまいますよね。
そのように読むと「放棄を行いさえすれば、持分が手放せる」と思ってしまっても致し方ありません。
共有持分の放棄と相続放棄の違い
もちろん相手の同意があれば、すんなり上のように成り立つことも十分あるわけですが、私が頭から「放棄ができる」と思ってしまったのには、おそらく「相続放棄」の言葉が似ていたためだと思います。
「共有持分の放棄」は相続放棄とは違いますので、「放棄」を表明してもそのままでは自身が不動産の所有者であることには変わりがありませんので注意が必要です。
相続放棄は相続登記の前に行う
相続放棄に関しては、そもそも相続登記がなされるよりも前に行う手続きですから、まだ不動産が自分の所有として登記がなされる前の話です。
登記簿上に名前が記されていないのですから、それ以前に登記をしないようにするべく放棄をする、というのが相続放棄です。
これは自分一人の意志によって手続きをすれば成り立ちます。
共有持分の放棄は所有後に行う
対して共有持分の放棄は、先に登記がされている共有物であれば既に自分の所有になってしまっており、かつ共有者がいるという状態の物に対してどうするかというものです。
すなわち、「相続放棄をする」「持分放棄をする」というのとは、それぞれ内容は全く違う話となります。
「自分が受け取らなければだいじょうぶ」と誤解をしないようにしましょう。
共有持分の放棄に必要なもの
共有持分の放棄に必要なものは
- 意思の表明と伝達( 文書または口頭)
- それまでの持分を移転する登記の手続き
の2つの両方が必要です。
共有持分の放棄の意思の伝達
上の説明の通り、「共有持分の放棄」というのは、共有名義の不動産で自分の持分を放棄するという意味とその意思表示をいう言葉であるのは間違いありません。
これには、内容証明が有効とされています。
しかし、意思表示も文書も、不動産の所有それ自体に対してはそのままでは何の変化もありません。
登記は対外的な証明
わかりやすくいうと、結婚すると言ってそれを男女が書面で成約したとしても、そのあとで市役所に行って「婚姻届けを提出して入籍する」という手続きをしなければ、結婚したことにならないのと同じことです。
不動産の所有権に関して言えば、対外的な証明である登記の手続きが必要となります。
「持分の放棄」というのは、その前段階の二者間での行為を指す言葉であって、不動産を手放す手続きそれ自体ではありません。
登記が行われなければ所有者のまま
したがって相手の同意に関わらず、登記が行われない場合、結婚の場合には婚約不履行の裁判があるように、あとは、放棄のための裁判を起こすしかなくなってしまいます。
裁判は可能でもいらないというものにお金をかけるというのは、その土地が多大な不利益を被るものであるなど、いくらか特殊な場合に限られます。
しかもそのような条件の不動産は、当然相手も手放したいのですから、放棄がすんなり通るはずはありませんね。
特に、私の実家のケースのように他の相続人が非協力的であるとか音信不通である場合には、放棄はまったく無効なです。
共有持分の放棄に必要な登記
共有持分専門の買取業者であるアルバリンク社の説明だと「持分の放棄は、自分の意思だけで行いますから、相手が存在しない法律行為です。」とした上で、
心の中で持分を放棄したと思っていても、他の共有者は放棄されたことを知ることができず、登記上で共有であることも変わりません。ですから、放棄したことを他の共有者へ知らせる必要があるだけではなく、登記もしておかないと、対外的には何も変わらないということです。
と説明しています。
共有持分の放棄は、不動産の名義を変えるしかるべき手順がそのあとに継続されなければならず、それが不動産の移転登記です。
共有名義の不動産の場合は、共有者が「受け取る」ことに同意の上で、手続きに協力をしなければ、放棄の手続きは自分だけでは成り立たないのです。
なお、共有持分買取プロを運営するアルバリンクはこのあと相手の同意が得られそうもない場合や交渉が必要な場合に備えて、持分の放棄よりも売却代金が得られる、持分の売却の方をすすめています。
持分の放棄はあくまで放棄であって、自分の持分を現金化することはできません。
持分が現金化できるのは、共有持分の売却だからです。
共有持分の放棄ができない場合
「早い者勝ち」というときの共有持分の放棄は、その不動産を自分の所有する物ではなくすることが目的です。
要らない土地や過疎地にある空き家などは、自分は相続したくない、税金も負担したくないという時は、他の相続人にそのように伝えることはもちろん可能です。
しかし、他の相続人及び、相続をする人の同意が取れない限り持分の放棄は成り立たないというのが結論です。
共有持分は放棄できない
相続の場合は放棄をしたいという時には、あらかじめ「相続放棄」をするのが一つの方法ですが、いったん取得してしまった不動産は手放す方法がないのです。
土地に関して「国に返す」法律である相続土地国家帰属法はありますが、国の引き取りには条件があり、共有名義の不動産には適応になりません。
共有持分は売却できない
また、買い取ってもその不動産を実質的に使えない、売ることもできずに管理責任と税支払いが生じる不動産を買う人はいないので売却もできません。
放棄したい対象となる不動産に対してできることは、現在の法律では売却か譲渡以外にはないのです。
共有持分の売却
共有不動産を共有者または不動産の相続人同士で売買する、または譲渡ができない場合は、同じことを第三者である不動産業者に行うことで持分を手放すことができます。
それが共有持分の売却です。
共有名義の不動産に関しては、全体を売却する意外に、持分を手放すことのできる唯一の方法が売却です。
あまり知られていない方法ですが、自分の持分だけを売ることは可能ですし、法律的にもまったく問題なくできるのは、私自身が弁護士の先生に持分売却をすすめられた通りです。
共有持分の売却後はどうなる
「共有持分の放棄」なら放棄した持分は共有者の所有となり、共有者の名義となります。
「共有持分の売却」の場合は、売却した持分は第三者の所有となり、第三者の名義となります。
共有者同士でも売却(買取請求)はあり得ますが、「放棄」の場合は、持分の代金は受け取れません。
対して売却の場合は、もちろん、その不動産の持分の分の代金が受け取れます。
後者は普通の不動産の売買と変わらないので、後者が十分おすすめなのです。
買取請求については下の記事に
【まとめ】
共有持分の放棄は共有者同士で話し合いがついている際は、問題なく進めることができます。
しかし、相手の同意が得られない場合には、放棄は成り立たないということがわかったと思います。
不動産の売買というのはお金を受け取ればいいわけではありませんで、土地の所有権を移転した証明となる登記の手続きが必要です。
持分が放棄で手放せる場合は、持分放棄の表明によって相手が持分を自分名義に登記することに同意した場合のみです。
それができない場合は、持分を売却することで不動産の自分の持分の分の代金を受け取り、第三者である買取業者に名義を移転してもらう、持分の売却が持分を手放す唯一の方法となります。
この場合は、もちろん他の共有者の同意は不要です。
よくわからない場合は、まずは持分をいくらで買い取ってもらえるのかの査定を含めて、買取業者に相談してみてください。
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